渦巻く知識

船を漕ぐ者 第三部

僕の岸辺には船がやってくる。
時には船着場ではなくて、砂浜にムリヤリ乗り上げるような船もある。
漕ぎ手は堂々と岸に降りて、ズカズカと僕の方へやってくる。
ムリヤリに握手をして彼はこう言う。
「お前も俺たちの仲間だろう。一緒に漕ぎ出そうぜ!」
僕は彼の顔を見つめる。モザイクのかかったその顔は、どこかで見たことがあった。僕は彼を知っていた。
「いやだ。僕は君とは一緒には行かない。僕の乗る船はこれじゃない。」
僕がそう言うと、彼は冷笑に伏す。
「この船はお前の船だ。お前が乗る船だ。いつだって俺はここに来るからな!」
そう言って彼は再びその船に乗って海へ出る。
僕は彼を知っていた。